君をひたすら傷つけて
 リズは仕事モードというか、戦闘モードに入っている。

「仕事もいいけど、身体も大事にしてね。イタリアの事務所の事も大事だと思うけど、私にはリズの方が大事だから」

「雅。もう少しだけ頑張らせて。今は本当に大事な時期なの。でも、雅は仕事のことは忘れて今日は楽しんできて。アルベールによろしく」

 そういうとそのまま仕事に行ってしまったのだった。リズのいう通り、私は最後の準備を終わらせた。髪とかメイクとかはリズがしてくれたから着替えるだけど思ったよりも時間が掛かった。

 アルベールがアパルトマンまで迎えに来たのはそれから一時間過ぎた頃だった。玄関のチャイムがなって、ドアを開けると優しい笑顔がそこにはあってドキドキした。

「早すぎたかな」

「ううん。でも、少し待ってくれる?コーヒーでも飲む?」

「リズが居ないんだろ?」

「さっき、仕事に行ったわ。アルベールによろしくって」


「リズが居ない時に入るのって悪くないか?」

「リズはそんなこと気にしないわよ。さ、どうぞ」

「じゃあ、少しだけ」

 アルベールはそういうと少し考えた後にやっと足を動かしてリビングの方に入ってきたのだった。リビングに入ると、アルベールはくるっと部屋の中を見回し、ふわっと笑顔を浮かべた。

「可愛い部屋だ。ここで雅が生活しているんだね」
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