君をひたすら傷つけて

一歩前に進む時

　アパルトマンの階段を下りるとそこには綺麗なメタリックブルーの車が停めてあった。アルベールが運転することは知っていたけど、高級と言われる車の存在にドキッとしてしまった。ピカピカの車体に輝くエンブレムは日本でも中々見ることの出来ないものだった。アルベールは助手席のドアを開けるとニッコリと笑った。

「雅。乗ってくれる？」

「うん」

　アパルトマンの前に駐車していると迷惑になるからすぐに移動させないといけない。でも、あまりの車の豪華さに身体が固まる。ドアの向こうに見えるシートは艶がある革で覆われていた。

『うん。』と言ったのに身体が動かない。

　躊躇する私に気付いたのかアルベールはそっと私の肩に触れると優しく車の中に入っていくように誘っていく。私はというと夢を見ているかのような現実に車の中に乗り込むとその柔らかいソファに身体を沈めたのだった。

「雅。シートベルトしないと危ないよ」

「分かっているけど…緊張する。こんなに凄い車に乗るのは初めてだし」

「そんなに緊張しないでいいのに」

　アルベールはニッコリと笑うとすっと手を伸ばし、肩の辺りにあるシートベルトを引き出すと装着してくれたのだった。

「ありがとう」

「ん。じゃあ、車を動かすよ。先にどこに行ったらいい？結構大きな荷物だけど買い物は終わっているの？」

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