君をひたすら傷つけて
 学校から駅までの道は毎日歩いている距離を車で行くとほんの少しの時間だった。車をロータリーに止めると高取くんとお兄さんが後ろを向いてきた。少しでも寒くないように駅に入る入り口の所に車は停まっている。これなら改札口にもスルッと行くことが出来る。


「本当にここでいいの?家まで送るよ。今日は特に寒いし、大事な時期に風邪を引いたら困るよ」


「いえ。本当にここで大丈夫です。ありがとうございました」


 ここまで送って貰っただけで十分だった。これ以上は本当に申し訳ない。そんな私の気持ちに気付いてくれたのはお兄さんの方だった。初対面の人に駅まで送って貰うハードルは高い。


「藤堂さん。家まで気を付けて帰って下さいね」


「ありがとうございます」


「藤堂さん」


 私がお礼を言ってから車のドアを開けると、助手席から高取くんに名前を呼ばれた。振り向くと綺麗な笑顔がそこにはあってドキッとしてしまった。高校生の男の子とは思えないくらいに無邪気すぎる笑顔に視線が奪われる野を感じた。綺麗な心の奥まで透けて見えるような笑顔に一瞬言葉を失った。


 こんなにも善意に満ちた笑顔は初めてだった。どうしてこんなにも心の奥が見えるような表情をするのだろうか。高取くんのことを知りたいと思った。ただ、知りたいと…。


「今日は本当にありがとう。また明日」


「うん。また明日。送ってくださって本当にありがとうございました」


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