君をひたすら傷つけて
 繊細な指で髪を梳き、時折、唇を落とす。そんな甘くて少し恥ずかしいような時間を私はアルベールの腕の中で過ごしていた。

「そろそろ寝ないと明日というか、今日は日本に行くんだろ」

「うん。長くて半月くらいだと思う。リズが仕事が終わり次第、日本に来てくれるから、それで帰国出来ると思う」

「ご両親や友達にも会ってくるんだろ。フランスに行くなって言わないといいけど」

「そんなことないよ。私の親は今、東京には居ないの。でも、会いに行ってくるつもり。友達は会えるといいけど」

「彼にも会うんだろ」

「お参りしてくる」

「そっか。もうそろそろ寝た方がいいよ。空港には送るから安心して寝ていい。おやすみ。雅」

「おやすみ」


 寝ようと思えば寝る時間はある。でも、まだこうしていたいと思った。そんな我が儘は私には言えなくてアルベールの腕の中で目を閉じて寝た振りをする。アルベールが寝たら、少しだけアルベールの顔を見ていたい。私は飛行機の中で寝ればいい。

 何時間か後に私は日本に向かう飛行機に乗る。こんなギリギリにならないと私はアルベールの思いに素直にはなれなかった。しばらく会えないと思うと寂しさとなり私の心を包んでいく。もっと早く私は素直になればよかった。もっと一緒の時間を過ごすことが出来たのにと思いながらも、今だからアルベールを受け入れることが出来たとも思う。

「雅。寝たのか?」
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