君をひたすら傷つけて
「愛してる。雅」

「私も」

 そこから記憶が曖昧になっている。私はずっとアルベールの腕の中にいた。痛みがなかったとは言わないけど、それ以上に心と身体が甘さと幸せに包まれていた。少し汗ばんだアルベールの胸に身体を預けていた。ゆっくりと身体を起こすとアルベールは腕の力を込めてくる。

「もう少しこのままでいい?」

「いいよ」

「痛かった?」

「痛かったけど大丈夫。なんか幸せだった」

 私はアルベールと一緒の時間を過ごして幸せを感じていた。愛されて愛を返して。アルベールの腕の中で止まっていた。自分の中での時間が動き出したような気がした。

 時は確実に流れているのに私の心はずっと義哉を失った時から動いてなかった。それがアルベールの優しさに包まれて前に進めたような気がする。義哉への思いは心の奥にある。それでも今、動きだした私の傍に居てくれるのはアルベールだった。

 出会ってから随分時間が流れていて、付き合いだしてからもかなり時間が過ぎていた。不器用で恋愛出来ない私をアルベールはずっと見守ってくれていた。もう恋は出来ないと思っていた私は今、恋をしている。

「何を考えてる?」

「別にちょっとぼーっとしていただけ。幸せだなって」

 アルベールは私の答えに言葉はなくてただそっと私の唇を塞いで、その優しく温かい腕に抱き寄せたのだった。
< 486 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop