君をひたすら傷つけて
「我が儘か。雅が好きで、抱きたいと思ってた。でも、実際に抱いたら自分の中の感情が怖くなった。雅が欲しいし、自分の腕の中に閉じ込めたい。自分の中の独占欲に辟易したよ」

 自分の中に起こる独占欲。それは私にも分かる。好きだからこそ、全て欲しくなる。

「アルベールが私のことを大事に思ってくれているからでしょ」
「そうなんだけど、俺が雅のことを好きになり過ぎた」
「私も好きよ」
「ああ」

 アルベールはシーツに包んだままの私をきゅっと抱き寄せると、そのまま耳元で囁いた。

「俺をあんまり煽らないで。また、抱きたくなる」
「煽ったりしてない」
「雅がそこにいるだけで煽られる。こんな自分を持て余している」

 言葉を言い追わないうちに私はベッドにふわっとベッドに沈められる。目を見開く私にアルベールはドキドキするような魅惑的な言葉を低く掠れた声で私の耳に響かせた。

「雅。俺を煽った責任は取って」

 朝までというか空港に行かないといけないギリギリの時間まで私はアルベールの腕の中で時間を過ごした。煽った責任とでもいうべきか…。さっきの優しさはどこに行ったのかと思うくらいに抱かれる私の身体は熱くて仕方なかった。

「雅。愛している。俺だけを見つめて。俺だけを愛して」
「アルベールを愛してる」

 最初に感じた痛みも…。いつしか消えてしまい、代わりにどうしようもないくらいの熱に包まれる。肌に流れる汗が愛しさを増していくのを私は感じていた。愛される自分の身体も心も愛しかった。

 それを教えてくれたのはアルベール・シュヴァリエ。
 私の好きな人。

 私が愛している人。

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