君をひたすら傷つけて
 放課後になって図書室に行くものもあれば、塾に行く人もいる。教室で談笑しているのは既に推薦で合格が決まり余裕がある人だった。羨ましいと思いつつも私の受験はまだ終わらない。私は直接塾に行くつもりだった。さやかを誘ってその前にどこかで息抜きをしたかった。

「さやか。何か食べて帰らない?」

「今日は用事あり。ゴメン」


 教室の前の方に座っているさやかの方に行こうとすると横から声がした。それは高取くんの声でニッコリとした穏やかな微笑みと一緒に私の耳に届いた。そんなに大きな声ではないのに私にはハッキリと聞こえたし、そして、惹きつけられた。

「藤堂さん。また明日」

 挨拶をして帰るだけなのに高取くんはとても楽しそうだった。学校が好きで堪らないというのは横に居るだけで感じる。

「…うん。また明日。」

 さやかは高取くんと私を見比べてから自分のバッグのチャックを締めた。


「高取くんともう話さなくていいの?先の帰ろうか?」

「別に何もないよ」

「そう?なら帰ろうか」

 さやかと並んで教室を出ると、さやかは歌いだしそうなくらいに機嫌がいい。何かいいことがあったのかと聞いても首を振るだけ。何度聞いても教えてくれないから、私は気になって仕方なかった。

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