君をひたすら傷つけて
 さやかと別れて行くのは駅前の塾だった。朝起きて学校に行く。終ったら塾。あとは帰ってから少し勉強してから寝る。学校と塾と家の言ったり来たりの日々だった。誰もが同じ様な思いを抱きながらこの時期を過ごすのだろうけど、私は躓くところが多すぎて、受験そのものに自信が無くなっていた。採点をする度に赤でのチェックが増えて行くのが嫌だった。

 英語だけでなく国語も数学も点数が伸びなかった。それで、あまりにも模試の成績が上がらないから志望先の変更を考えていた。先生は安全を取るようにというけどどうしても第一志望を諦めることは出来なかった。溜め息と共に職員室を出ようとしていたら、急に後ろから担任の先生から声を掛けられた。


「藤堂さん。教室にこのプリントを持って行って配っておいてくれる?ホームルームには少し遅れるかもしれないとクラス委員に言っておいてくれる」

「はい」

 今日は志望校の受験の件で教科担当の先生と職員室で話をしていて、話が終わり、職員室を出ようとしたら引き留められた。指差された先には茶封筒の束が置いてあった。

「卒業式に関してや受験の件。奨学金の事などの書類が一人ずつに袋詰めされているから教室に運んでくれる?クラス全員分だから重たいかもしれないけど藤堂さんだったら大丈夫よね。

「はい。大丈夫です。運べそうもなかったら誰か連れて来ますから」

「じゃ、よろしく頼みます」

 担任の先生に比べたら私の方がかなり若い。この年齢差から考えると私は荷物を喜んで持つ立場である。でも、思ったよりも重たくて、か弱き乙女にこんな重いものを持たせるなんて酷いと思ったりもしながら教室に向かって続く階段を上がっているとこだった。
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