君をひたすら傷つけて
ホッとしたような声を出すのはリズはフランスからこのマンションの部屋を予約したからかもしれない。名義は私だったけど連絡先住所はパリだった。女性の名前で予約したのに、電話を掛けたのは男性。

「日本の方だったのですね。パリからの予約でしたのでフランスの方かと」
「あちらで仕事をしてますが、日本人です」

「日本での彼女の保証人には私がなりますので大丈夫です。何かありましたら私の携帯に連絡してください」

 そういうと、お兄ちゃんは自分の名刺を取り出すと不動産屋さんに渡した。そこまでしないでいいと思っていたけど、名刺を見て、さっきよりもニッコリと微笑んだ。

「いつもお世話になっております。まさか、〇〇プロダクションの方でしたか。私どもの所有しているマンションのいくつかの部屋を借り上げて貰っています」

「これは会社とは全く関係ない個人的なことですので」

「何か困ったことがあればいつでも言ってきてください。それではこちらの部屋になります。2LDKの部屋になります。家具は備え付けです。出られる時に現状維持の確認はさせて貰います」

「いえ。大丈夫です」
「では失礼します」

 不動産屋さんはお兄ちゃんとだけ会話をしてマンションの部屋から出て行った。私一人でなくてよかったと思った。お兄ちゃんと二人っきりになってしまった私はフッと息を吐いた。フランスから帰国して、部屋の鍵が貰えたことで気持ちが緩んでしまった。

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