君をひたすら傷つけて
 諸事情で一緒に住むことになって最初は緊張したけど、篠崎海を通して、マネージャーとスタイリストとなると、テレビ局をはじめとする現場でも会うことが多い。だから、篠崎海の仕事ぶりを目の当たりにすると、マネージャーとして真剣になる気持ちも分かる気がする。それだけの価値が篠崎海にはある。


 若手で人気実力とも定評のある『俳優 篠崎海』は元々モデルで、俳優に転向する時にお兄ちゃんがマネージャーに就任。そして、私は彼の専属のスタイリスト。最初は仕事としてではなく出会った篠崎海だけど、私が選んだ服が雑誌に載り、その反響の良さから私が専属となった。


 フランスから帰国したばかりの私にとって、『俳優 篠崎海』の専属スタイリストという肩書は思っていた以上の大きなもので、順調に仕事が出来ている。私がスタイリストとしてのドアを開く鍵を開けてくれたのはお兄ちゃんのお蔭だと思っている。


「そうね。最初の頃に比べたら全然違うわ。演技も艶というか雰囲気が凄くいいと思う」


 微笑みながら私を見詰める優しさに甘えるように私は腕を伸ばした。そんな私をお兄ちゃんは仕方ないというかのように抱き寄せると背中をポンポンと撫でる。その優しさと甘さに私は甘えていた。そんなお兄ちゃんに甘える私にお兄ちゃんは惜しげもなく甘やかす。


 血も繋がってないのに抱きつく私は…ブラコンなのかもしれない。いや、外国での生活が長かったからだと言い訳をしておこう。

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