君をひたすら傷つけて
「最初、フランスの空港に迎えに来てくれるはずのルームメイトは日本人だと聞いていたのに、実際に迎えに来てくれたのはゴージャスな美女だったの。本当に吃驚したの。でも、リズもまりえも本当にいい人で私はゆっくりと二人に癒されたの」

 思ったよりも楽しく始まった生活。語学学校に通い、優しい人と私は出会った。優しいだけでなく自分の気持ちに素直な二人に出会って、私は偽りのない優しさに包まれたこと。二人で出会って、自分の中に少しだけ自信がついたこと。

 リズの手伝いで始まった私の仕事は、今では私の中で生きがいになっているし、この仕事が好きだということ。今回は代理とはいえ、正式にスタイリストとしてリズの代わりに日本に来たこと。

 そして、一番私の中でいうのに躊躇したことはアルベールと出会ってとっても優しい気持ちになったことを伝えることだった。

 長い時間を掛けて私はアルベールとの間に思いを交わしたこと。怒られるわけでもないのに、義哉に言いながら、私の声が少しだけ小さくなる。責められることはないのに、少しだけ私の心に浮かぶのは影。

「アルベールにフランスに帰ったら一緒に住もうと言われたの。もしも一緒に住むとなると、もう義哉に会いに来れないかな?それでも日本に来た時は義哉に会いに来ていいかな?」

 答えはないのに私は静かに義哉に話した。

「そろそろ行かないと。また帰る前に来るから」

 ゆっくりと立ち上がると、私は義哉の眠る場所に視線を送る。すると、急に胸がきゅっとなって……私は涙を零していた。
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