君をひたすら傷つけて

変わらない愛

電車に乗って向かうのは五年前は一月に一回は必ず訪れていた場所だった。こんな風に私は時間を決めて向かっていたことを思い出す。駅を出てすぐの所にある花屋で義哉の好きだった花を買い、真っ直ぐに歩き出した。義哉の眠る場所が見えてくる。会いに来たのに次第に足が重くなってしまう。会いたいのに怖かった。

 一歩一歩ゆっくりと歩いて近づくと、そこには綺麗な花が飾られていた。義哉の好きな花で私の手にあるものと一緒だった。

 墓石に刻まれた名前が…私の時間を巻き戻す。

「義哉。ただいま。しばらく来れなくてごめんね。あれから五年も経ってしまったのね」

 手を合わせて目を閉じると脳裏に刻まれた義哉の笑顔が浮かんでくる。その笑顔が私の胸を苦しくさせた。心の奥にしまいこんだはずの義哉への思いが身体中を駆け巡っていた。

「義哉。前に来た時から五年も経ってしまったわ。一年のつもりだったのに、五年も経ったの。……ねぇ。聞いてもいい?私のこと怒っている?義哉以外の人と恋をしてしまったことを怒っている?」

 私は一生、義哉だけを愛するつもりだった。他の人は愛せないと思っていた。でも、優しさに包まれて私は二度目の恋をした。それでも私は愛されることによって幸せを感じることが出来ていた。

「アルベールは義哉のことを思っている私でもいいと言ってくれるの。優しいけど、申し訳ない気持ちにもなるの」

 アルベールと恋をしたことを後悔はしてない。でも、心の奥底には義哉がいて…。

 義哉の前に立つと答えはないと分かっているのに聞いてみたくなる。もちろん答えなんか返ってこないのは分かっている。それでも私は義哉に話さずには居られなかった。
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