君をひたすら傷つけて
「でも、こんなには貰えない」

 ショーのスタイリストとか撮影のスタイリストとかの仕事ならまだしも、今日はお兄ちゃんの誕生日プレゼントを選んだだけ。それでギャラなんか貰えない。

 それにお友達価格って…。そうじゃなくても途中でお茶した時にコーヒーもご馳走になっている。それに日本で全くの実績のない私にたった一時間くらいで二万円というギャラは多すぎる。

 篠崎さんは眩い微笑みを浮かべたまま、私からお金を受け取ってくれる気配はなかった。

「なら、サービスして。俺にも一枚シャツを選んでくれる?それでどう?」

 篠崎さんのシャツを選ぶくらいでいいのか分からないけど、どんなにこのお金を差し出しても受け取って貰えないような気がする。

「シャツだけでなく、ジャケットもズボンもネクタイでも何でも選ぶの手伝います。でも、本当にそれでいいんですか?」

「もちろんだよ。じゃ、全身コーディネートして貰うおうかな。仕事以外で着れる服がいい。いつもワンパターンだからバリエーションが欲しいな。いつも似たような格好で普段着を買えって高取にも言われている」

「普段着ですか?」

「そう、カジュアルなもの。芝生でゴロゴロ出来るようなの」

「芝生でゴロゴロするんですか?」

「しないけど、例えだよ」

 まさか仕事以外で着る服を選ぶことになるとは思わなかった。仕事の服なら『俳優』としての色を壊したらいけないけど、普段着ならもっと着やすくて楽な服がいいと思った。ブランドに拘らず、彼のイメージを壊さない服がよかった。

「好みの店とかありますか?」
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