君をひたすら傷つけて
他の人と一緒に居る時に『お兄ちゃん』と言わないように気を付けていたのに、つい『お兄ちゃん』と言ってしまっていた。篠崎さんの言うとおり、私の帰国は来週の半ばで週末は…義哉に会いに行くために空けている。

「ありがとうございます」
「え?」

 私の言葉に篠崎さんは驚いた顔をした。私がお礼を言ったのはこの人がお兄ちゃんの傍に居る限り、お兄ちゃんは幸せで居られると思ったからだった。私の傍にリズやアルベールがいるようにお兄ちゃんの傍に篠崎さんがいてくれて嬉しかった。

 お兄ちゃんはきっと寂しくない。それを知ることが出来ただけでも、今日、篠崎さんと買い物に出掛けた甲斐があった。

「お礼を言われることは何も言ってないと思うけど…。さ、休暇のことは置いといて、決めようか」

 長い間考えて決めたのは普段に着れる様なシャツと仕事で使えるネクタイ。単純だけど、普段使って貰えるものがいいと思った。

「あの半分出します」
「うん。分かった。じゃ、半分」

 シャツとネクタイで五万円を超えていた。私は二万五千円を自分の財布から取り出して篠崎さんの方に差し出すと篠崎さんは五千円札だけをスルリと抜き取った。

「じゃ、遠慮なく貰うね」
「それじゃ足りないです」

 でも、篠崎さんはニッコリと笑って首を振り、その五千円を財布の中に入れるとカードを取り出して支払いをしてしまった。

「私からもプレゼントですから」

「だから、半分は出してもらったよ。でも、雅さんはスタイリストでしょ。残りは今日の仕事のギャラだよ。足りないかもしれないけどお友達価格で。」
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