君をひたすら傷つけて
「いいですよ。でも、私でいいんですか?」

「雅さんの選ぶ服は形も綺麗だけどフィットする感じがする。着心地のいい服を選んでくれるからね」

「じゃあ。日本に帰ってきたらその時はってことでいいですか?」

「予約忘れないでよ。専属の件」

 駆け出しのスタイリストに予約。それも、今をときめく若手実力派俳優の篠崎海からの予約となると光栄なことだと思う。でも、私の仕事の拠点はフランスにあって日本ではなかった。

 でも、篠崎さんが私を認めてくれたということだけは嬉しかった。そんな話をしていると車はエマの事務所の前に着いてしまった。マンションではなく事務所に送って貰った。

「今日はありがとうございました。高取さんのプレゼントはよろしくお願いします」

「俺の方こそ、助かった。雅さんのお蔭でいいものが買えたし、責任を持って高取に渡しておくから」

「はい。よろしくお願いします」

 篠崎さんは綺麗な微笑みを浮かべて手を軽く振ってから帰っていく。走り去る車を見ながら、お兄ちゃんのプレゼントも選ぶことが出来たし、今日は久しぶりに仕事が出来たような気がする。

 それだけで嬉しかった。
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