君をひたすら傷つけて
 教室に行くとみんなはいつもの通りに勉強中。私が席に着くと高取くんがニッコリと笑った。さっきまで告白を受けていたとは思わないくらいにいつも通りでそれがまた胸を苦しくする。

「おはよう。藤堂さん。今日も寒いね」

「うん。おはよ。本当に寒いね」

 いつもならもう少し話すけど、今日は笑顔を見るのはキツかった。自分の揺れた気持ちを誤魔化すかのようにバッグから問題集を出した。今朝の解けなかった数学はもう一度考えても分からない。自分の力では無理と先生に聞きに行くことにしたのは昼休みでお弁当を食べた後だった。

 昼ご飯を食べてからの休み時間では時間が足りず、また、おいでと言われたのは仕方のないこと。でも、その帰りについでと言って先生に頼まれたのはまたプリントを教室まで持っていき、皆に配るというものだった。先生に頼まれたら断ることは出来ずに運ぶことにはなるのだが、この前のように大量でなかったのが幸いだった。

 
 プリントを持って階段を上っていると教室のすぐ横には高取くんがいて、階段を上がってきた私を見てニッコリと笑った。屈託のない素直な表情が今日は胸を痛くさせる。

 恋に気付いた私は恋の収め方を考えながら過ごしていた。

 恋を忘れる手段として一番いいのは受験勉強に邁進すること。実際に恋をしている時間なんか私にはない。でも、高取くんの存在は簡単に私を揺らす。


「藤堂さん。前のセンター試験の後と言っていた約束を少しだけ前借りしてもいい?」


 そう自分に言い聞かせているのに…私を高取くんは揺らす。


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