君をひたすら傷つけて
私は自分のアパルトマンの部屋に戻り、久しぶりに自分のベッドで寝ることにした。リズが日本に来る前に掃除をしてくれたようで、ベッドは綺麗に整えられ、床にもテーブルにも埃さえなかった。

「もう寝ようかな」

 私は時差による強烈な眠気に誘われるように落ちていった。でも、そのお蔭で私は何も考えないですんだ。朝起きて…といっても既に夕方になっていて、私はアルベールに連絡をすると、すぐには返事はなかった。

 そして、自分の部屋で仕事をしながら時間を過ごしていると、アルベールからの連絡が入った。そして、夜遅くに会ったアルベールは…いつも通りだった。

 優しいアルベールだった。

 フランスでの生活は仕事をしないだけで、後は何も変わらなかった。リズは日本に来る際に残っていた仕事を全部終わらせていたので、私はメールのチェックと日本への連絡が主な仕事になっていた。たった、九日しかフランスに居ないので、仕事を入れるわけにもいかないから、仕事の管理をするだけにした。

 リズのパソコンには仕事の依頼がどんどん入ってくる。それの内容を確認して、スケジューリングを考えながらリズにメールを転送する。するとリズが受けられる仕事と断る仕事を振り分けていく。

 そんな事務的な仕事をしながら私は毎日アルベールに会っていた。

 アルベールも忙しいみたいで、丸一日空くことはないけど、寸暇を惜しむかのように会いに来てくれている。玄関先でキスをして帰ることさえあっても毎日会いにきてくれていた。

 アルベールの腕に抱かれて朝を迎えることも何回かあったけど、私を抱いた後、落ちるように眠るアルベールの身体のことが心配だった。抱かれる度に愛は深くなるけど、その分、失うことも怖くなる。恋は甘いけど不安も突き動かす。

『雅。愛している』
『誰よりも愛している』

『ニューヨークから帰ってくるのを待っているよ』


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