君をひたすら傷つけて
 篠崎海の撮影の朝。私が起きたのは朝の二時半だった。現場入りは四時の予定だったから、前日に着る服から全てを用意していた。お兄ちゃんだけでなくリズにも言われたとおり、私は身体を休めることに全てを注いだ。体力がないとやっていけない仕事で、昨日の夜の煌めくようなレストランの食事とはうって変ったような戦場に今から向かう気がする。

 夜明けと共に撮影があるのは分かっていたけど、ワインを飲んでの懇親会の後、数時間後には撮影の準備を始めるのは正直キツイ。でも、これがプロの現場なのかもしれない。五時からの撮影なら私とリズは篠崎さんが現場入りする前までの準備をしておかないといけなかった。

 私が起きてすぐにリズからの連絡があった。まだ、寝間着の状態だった。

『雅。時間変更。聖が夜明けではなくて、未明にするって言いだしたって連絡が入った。15分後にロビーに来れる?』

 15分後にロビーって……かなり鬼畜。

『分かった。すぐに用意してから降りる』

 バタバタと荷物を持ってロビーに行くと、そこにはリズが私を待っていた。リズも寝ているところを起こされたようだったけど、。私は顔を洗って口紅を塗るのが精一杯だったのに、リズは私とは違って綺麗に化粧が施されてあった。

 無言で荷物を持って用意されたワゴン車に乗ると私とリズを乗せた車はビル群を抜け、ハドソン川の流域にある場所を目指した。そこには既に現地のスタッフが機材などを持ち込み、撮影準備を始めていた。

 そして、その真ん中に……橘聖はいた。


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