君をひたすら傷つけて
変わりやすい天気の関係で一番最初に止まったままの最初の朝焼けのシーン以外は順調に撮影を終わらせて行っていた。でも、あの朝のシーンだけは何度も何度も挑戦するけど、橘さんは納得できないようだった。
『ただの映像作家じゃないから』
お兄ちゃんはそんな風に橘さんの事を言う。ニューヨークのスタッフは橘さんが拘るのに一言も文句を言わない。今出来る最高の瞬間を切り取ることに精力を傾けていた。でも、スケジュールも厳しくなっていく中でお兄ちゃんの仕事も大変そうだった。既に予定の期間を二日超えていた。
人気俳優の篠崎さんのスケジュールを組み替えていくのが大変なのだろう。撮影の合間に電話やメールをすることが多くなっていた。そんな姿を見ながら、私が知らないお兄ちゃんの姿を見た気がした。いつも優しくて何でも出来るお兄ちゃんだけど、真っ黒に書き込みをされた手帳を捲りながら、厳しい表情を浮かべる。そんな姿を私は見ていた。
「高取は凄いだろ。俺が自由に動けるように細心の注意を払ってくれている。だから、そろそろ、高取の為にも頑張らないと」
抑揚に独特の甘さを醸し出した声の主はニッコリと笑う。魅惑的なバリトンは耳だけでなく心の奥に染みわたるように優しい。篠崎さんは私と同じようにお兄ちゃんを見つめていた。
「そうは言っても、聖次第なんだけど」
そう言ってクスクス笑う篠崎さんはお兄ちゃんに呼ばれて行ってしまった。私はそんな光景を見ながら……。なんか、少しだけ昔に戻ったような気がした。
『ただの映像作家じゃないから』
お兄ちゃんはそんな風に橘さんの事を言う。ニューヨークのスタッフは橘さんが拘るのに一言も文句を言わない。今出来る最高の瞬間を切り取ることに精力を傾けていた。でも、スケジュールも厳しくなっていく中でお兄ちゃんの仕事も大変そうだった。既に予定の期間を二日超えていた。
人気俳優の篠崎さんのスケジュールを組み替えていくのが大変なのだろう。撮影の合間に電話やメールをすることが多くなっていた。そんな姿を見ながら、私が知らないお兄ちゃんの姿を見た気がした。いつも優しくて何でも出来るお兄ちゃんだけど、真っ黒に書き込みをされた手帳を捲りながら、厳しい表情を浮かべる。そんな姿を私は見ていた。
「高取は凄いだろ。俺が自由に動けるように細心の注意を払ってくれている。だから、そろそろ、高取の為にも頑張らないと」
抑揚に独特の甘さを醸し出した声の主はニッコリと笑う。魅惑的なバリトンは耳だけでなく心の奥に染みわたるように優しい。篠崎さんは私と同じようにお兄ちゃんを見つめていた。
「そうは言っても、聖次第なんだけど」
そう言ってクスクス笑う篠崎さんはお兄ちゃんに呼ばれて行ってしまった。私はそんな光景を見ながら……。なんか、少しだけ昔に戻ったような気がした。