君をひたすら傷つけて
「いや、海斗じゃない。日の出の光りの筋が気に入らない。もっと、真っ直ぐ強い光が欲しい。夜明けはいい感じだったけど、最初の光が弱すぎた。でも、もう少し時間が経つと、きっと作られたような光になる」

「自然なら仕方ないな。じゃ、俺は自分の部屋に戻って。寝ようかな」

「そうだな。身体冷やすなよ」

「お前がそれを言うなよ」

 そう言いながら、篠崎さんは笑っていた。

 篠崎さんの動きは綺麗で、それに満足するかのように橘さんもシャッターを切ってた。でもそれではダメらしい。そんな拘りを全て受け入れたかのように、周りは動いていた。夜明けとともに始まった撮影は片付けまで終わってしまった。

 片づけをしていると橘さんはフラッとやってきた。

「リチャードは?」

「リズさんは車に荷物を運んでます」

「そうか、今はリズだったな。エマが雅ちゃんを一緒にニューヨークに来させてくれたことに感謝しているよ」

「私はリズのアシスタントですから」

「そうだね。雅ちゃんはリズの片腕だね。また、明日もよろしく」

 橘さんはそれだけ言うと自分の持ち場に戻って行った。リズが戻ってきて、橘さんが来たことを伝えると、『分かった』とだけ言った。

 リズはホテルの部屋に戻って来て、私の前に一枚の写真を置いた。さっき撮影したものをプリントしたものだった。
 
 群青色の空に細い光が浮かび、その光が篠崎さんの輪郭を浮かび上がらせていた。あの優しく朗らかないつもの表情とは違う『篠崎海』は……。

 綺麗だった。

 
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