君をひたすら傷つけて
 オレンジジュースと一切れのサンドイッチを食べた私はリズに薬を貰い、目を閉じた。気が張っていたのが緩々と解けるように意識が薄れていく。そんな中でリズの優しい声が囁いた。

「雅。アパルトマンに使いの人をやったら、もう記者などの張り込みはないみたいよ。どうする、一度、部屋に戻る?」

「本当にいないの?」

「そうみたい。アルベールが手配したのかもしれないわ。彼は本当に優しいし、素敵な人だと思うわ。一緒にいたら、きっと幸せになれると思う」

「ねえ、リズ。幸せって何なのかな。私、今でも義哉が好きなの。アルベールも好きだけど、義哉に感じたような心の奥から湧き上がるような思いをアルベールには持てないの。それでもアルベールと幸せになれると思う?このまま、アルベールの手を取って幸せになれると思う?」

「雅……」

「仕事か恋じゃなかった。私はアルベールを選べないのは本気で恋が出来ないからだって気付いたの。アルベールのことが誰よりも大事だと言い切れない。もう少し時間があれば、アルベールのことをもっと好きになれたかもしれないし、誰よりも大事といえたかもしれない。でも、私の気持ちはそこまで育ってない。もう、恋なんて出来ないのかもね」

 そこまで自分の気持ちを吐き出すように言うと、私は聞き始めた薬のせいで緩やかな眠りに落ちていく。

「そんなことないわ。自分のことを決めつけないので。でも、どんな選択をしても大丈夫。何があっても雅のことは私が守るから。私は雅の味方だから」
< 651 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop