君をひたすら傷つけて
「一緒に仕事が出来るようになって嬉しいです。俳優となりそれなりのイメージが必要なので私服のコーディネートもお願いしたいし、自分の持っている服をどう合わせていいかも相談に乗って貰いたいし。雅さんの選んだ服が好きだから、これからが楽しみです」

「ありがとうございます」

「雅さん。早速ですが、明日のコーディネートの相談をしたいのですがいいですか?」

 契約を終わらせたとはいえ、このタイミングで仕事の依頼があるとは思わなかった。でも、これも大事な仕事の一つだとも思う。

「いいですが、明日は何の仕事ですか?」

 答えたのは篠崎さんではなくお兄ちゃんだった。

「明日は朝6時から、ドラマの早朝ロケ、それが終わると昼から雑誌の撮影。夕方からは先日のCMの完成上映会で、クライアントと食事の後、懇親会となってます。クライアントとの食事会はスーツでいいですが、雑誌の撮影にスーツは固すぎるし、用意された衣服を身に着けての撮影なので、脱ぎ着がしやすいもの、皺になりにくい素材でありながら、少しのフォーマルさも必要になります」

「本当に忙しいですね」

「仕方ないんだ。ニューヨークでの撮影が長引いた分、しばらくはこんなスケジュールになっている。でも、本当ならもう少しあったのに、高取がセーブしてくれているから、とりあえず人間の生活は送られている」

 そういってクスクス笑うけど、どう考えても時間に追われる仕事内容なのは間違いなかった。

「ご希望に添えるように頑張ります」

「期待しています」

 こうして私の新しい仕事が決まった。
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