君をひたすら傷つけて
「お兄ちゃんの部屋ってシンプルなのね」

「帰っても寝るだけの空間だから必要なものしか置いてないんだ。実家からこっちのマンションに引っ越した時に整理したんだ。でも、リビングと寝室にはそれなりに荷物はあるよ」

 そして、案内されたリビングには大きめのソファとテレビがあった。テレビ台の上には……義哉が笑っていた。笑っている写真が飾ってあり、私は視線を奪われた。見たことのない写真の義哉は笑っている。でも、少し、私の知っている笑顔とは違う気がした。

「夜中だけど、コーヒーでも飲むか?後はビールか水しかない」

 お兄ちゃんは義哉の写真に見つめている私を見て、テレビ台の写真立てを持って義哉の写真を見つめた。

「それは義哉が高校に入ったばかりの頃の写真だ。あの頃は学校も殆ど行けてなくて、勉強は通信でしていた。分からないところは私が教えたりもしていた」

「私は数学が苦手でいつも義哉に教えて貰っていたの」

「義哉は英語と数学が好きだった。英語は世界中の人と話をしたいからだと言っていたし、数学は答があるから好きだと言っていた。その写真。雅に昔、あげた写真とは違うだろ」

「うん。私がもらった写真は普通の義哉の笑顔だった。でも、この写真の義哉は何か違う気がして」

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