君をひたすら傷つけて
「義哉は自分の病気のことで回りが心配しているのを感じていたから、母親が写真が欲しいというといつも笑って応えていた。無理をしていたのかもしれない。時間が無くなっていくのを感じ始めた頃から、義哉はいつも笑っていた。
 でも、雅といる時は本当に楽しそうで、その頃の写真は屈託のない笑顔が溢れていた。あの屈託のない笑顔も好きだけど、私はこの繊細な義哉を守ってやりたいと思っていた」

 義哉は自分の心配をさせないようにといつも笑っていた。自分の病気のことを知っていたのだから、きっと怖かっただろうし、心細いと思った夜もあるだろう。でも、その横にはずっとお兄ちゃんが居た。誰よりも義哉の事を大事に思うお兄ちゃんがいた。

 それだけで義哉は幸せだったろう。心細い夜も少しは癒されたかもしれない。

「義哉は幸せね。だって、お兄ちゃんがこんなにも義哉のことを理解しているから」

「だといいがな。でも、兄には出来ないこともある。さ、雅も色々あったから疲れただろう。シャワーでも浴びて寝たらいい。タオルは棚にあるのを好きに使っていい。それと、これがこの部屋のカギだよ。この部屋の物は自由に使っていいから。冷蔵庫には水とビールくらいしか入ってないが、よかったらどうぞ」

 合鍵を渡され、私はお兄ちゃんを見上げた。優しすぎると思った。でも、その優しさに甘えてしまう私がいた。
 
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