君をひたすら傷つけて
「藤堂さんのおかげだね。今日はとっても楽しい」

 高取くんの真っ直ぐな視線を向けながらの微笑みに抗うこともなく恋に落ちる気がした。このままずっとこの時間が続けばいいと思う。

「私もこの頃、ずっと塾で勉強ばかりだったから、今日は来てよかった。受験のことで頭がいっぱいで怖かったの」

「怖いの?」

「怖いよ。だって、もうすぐ人生が決まるんだもの」

「決まらないよ。受験は大事だよ。でも、それで藤堂さんの人生が決まるわけじゃないよ。どんな時でも藤堂さんなら自分で幸せになる道を探して選び抜くと思う」

「ありがと。高取くんの言葉にホッとする」

「そう、ただ、そう思っただけ」


 色々な店を見て回り私が足を止めたのはナチュラル系のインテリアの店だった。シンプルだけど可愛いなって思ってふらっと入ったのだった。


 店内は鼻腔を木の香りが擽り落ち着く優しさが漂ってくた。

 
 シンプルな色合いの店の中の方まで入っていくとそこには可愛らしい雑貨が並んでいた。文房具もあれば、棚に飾るような陶器で出来たウサギの置物もある。絵本の中から飛び出してきたようなウサギの可愛らしさに目を奪われているとその横に小さな木の箱を見つけた。


 さほど大きくない木製の箱でアクセサリーケースと使うのだろうか。ゆっくりと蓋を開けると静かに音楽が流れだす。繊細な音を奏でるオルゴールだった。アクセサリーケースと思って開けたのに、実際はオルゴールで一番驚いたのはもしかしたら私かもしれない。
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