君をひたすら傷つけて
「明日は篠崎さん関係の仕事はないから、事務所で溜まっている書類の整理をするつもりよ。京都の撮影は三日後のはずだったけど、それでいいのよね」

「事前の打ち合わせで衣装合わせは終わっているから、雅が京都入りするのは撮影が始まってからでいいよ。後は海から連絡があり次第、すぐに連絡する。雅がいると助かるよ」

 一緒に住みだして、夜に帰ってきてから、仕事を打ち合わせをすることが多くなっていたけど、仕事の話ではなく、篠崎さんの恋愛事情を相談することになるとは思わなかった。

「美味しいご飯楽しみにしてるから」

「今回はとりあえずって感じになるが、京都に行ってからは期待していい」

「楽しみにしとく」

 最初はエマに言われて仕方なくの同居というか、間借りだったけど、あの後、日本に来たリズからも一緒に住むことは拒まれたのも大きかった。

「雅が居たら、彼と住めないから」

 そういわれるとリズに甘えることが出来なかった。怖くて前のマンションに戻ることも出来ず、かといって、経済的にも場所的にもセキュリティ的にも見合う新しいマンションも見つけることが出来なかった。

 お兄ちゃんの部屋にズルズルとお世話になっていて、さすがに申し訳なくて、ウィークリーマンションに住もうと思っていたら、お兄ちゃんから言われた。

『雅。そのまま住むのは嫌か?シェアハウスと思えばいいだろ。家賃はもちろん払って貰う。たまに海が泊まりにくることがあるかもしれないが、それ以外に誰も入れないから』

都合の良すぎる提案に頷いたのは他に選択肢がなかったからだった。でも、お兄ちゃんのマンションに住みだして、仕事場も一緒だし、本当に都合がいいことばかりだった。

夜中に二人して『俳優篠崎海の恋愛事情』について相談することになるとは思わなかったけど。
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