君をひたすら傷つけて
 穏やかに微笑むお兄ちゃんを見ながら、私は不安が消えていくのを感じていた。依存していると自分でも思う。でも、お兄ちゃんの存在が、声が私を安心させた。

「夜まで荷物預かってくれる?しばらく滞在するホテルを探さないといけないの。京都はホテルがいっぱいあるからすぐに見つかるとは思うけど」

「雅のホテルは海と一緒にしてある。もちろん、私も一緒だよ。監督とか他のスタッフは自由に動きたいからと別なホテルの部屋を取っている。インスピレーションが騒がしいと沸かないとかいうけど、京都観光をしたいのだろうね。綺麗な風景も美味しい料理もあるから……。

 雅も時間を作って観光してくるのもいいと思うよ。古都の美しさを感じることが感性を磨く」

「お兄ちゃん。篠崎さんと一緒のホテルは無理」

 今回の撮影に対するギャラは既にエマの事務所に提示されてあって、必要経費は後から請求することになっている。ホテルが決まれば、まりえが支払いの手配するようになっていた。限られた経費の中で私のホテル代は普通のビジネスホテルに泊まれるくらいしかない。

「雅のホテル代は気にしないでいい」

「でも……色々とあるし」

「契約しているギャラとは別にホテル代はウチの事務所が出すから大丈夫だよ。雅は篠崎海の専属スタイリストだろ。どこで写真を撮られるか分からないから、映画の撮影だけでなく、私服のコーディネートも見て欲しいから、近くにいて貰った方がいい」

「でも…」
< 722 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop