君をひたすら傷つけて

記者会見の恋愛の行方

　篠崎さんのマンションの部屋に入るといつもとは違って、少し表情に緊張を滲ませた篠崎さんが居た。そして、篠崎さんの後ろにはもっと緊張を身体中に漲らせた里桜ちゃんがいる。お兄ちゃんと私を見て、一生懸命笑おうとする里桜ちゃんを助けてあげたいと思った。

「じゃあ。私は里桜ちゃんの準備を手伝うわね」

「頼む。俺は海と打ち合わせをする」

「出来るだけ早く終わらせるから。じゃ、里桜ちゃん。行こうか」

　そう言って、里桜ちゃんの部屋に入ると、里桜ちゃんをドレッサーの前に座らせた。不安げな里桜ちゃんが少しでも気持ちが上向くように話しながら、化粧をして、髪を纏めていく。そして、クローゼットの中から、一緒に買い物した時のドレスを着せることにした。

　あの時も思ったけど、このドレスは本当に可愛いし、上品な雰囲気を持っている。もしかしたらどこかで写真を撮られたとしても恥ずかしくないものだった。会見に出るのは篠崎さんだけだけど、どこで何があるか分からないから、最大限の準備は必要だった。

　本当は会場に行かない方がいいのかもしれないとは思ったけど、一人でマンションで待つよりは一緒に行った方が楽なのかもしれない。

「里桜ちゃん。篠崎くんはいい人だから、大丈夫だよ。お見合いしたと思えばいいと思う。出会いは色々でしょ」

「雅さん。私ね、海斗さんのことが好きなの。好きだからこそ辛いの。海斗さんが私のことを好きじゃないから」

　里桜ちゃんは自分がどれだけ愛されているか分からないみたいだった。傍から見れば分かることも当事者にとってみれば、見えないのかもしれない。篠崎くんの強引とも思える今までの行動は全て里桜ちゃんのためなのに。

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