君をひたすら傷つけて
 多分、高取くんが連絡して十五分くらいしか経ってない。お兄さんは近くにいたのだろうか?そうとしか考えられないくらいにショッピングモールに来ていた。お兄さんは高取くんの姿を視線に捉えるなり、これ以上ない位に必死に走ってきた。


 仕事の合間だったのだろうかスーツに革靴という姿なのに全てを捨てそうな勢いで走り来る。手には携帯を握っていて、他には何も持ってない。そのまま走ってきたとしか思えない。


「義哉!!!!!大丈夫か?しっかりしろ」


 お兄さんの叫びにも似た声が響き、高取くんはそっと視線を上げると、私に向かってニッコリと微笑んだ。


「もう、大丈夫。兄さんが来たか…。」

「高取くん?ね、大丈夫?大丈夫?」


 微笑みは緩やかに剥がれ落ち、ガクッと身体が揺れたかと思うと、私の身体に寄りかかり、瞳を閉じたのだった。お兄さんが来たことで最後の最後まで振り絞っていた力が抜けたのかもしれない。力の抜けた男の人の身体は女の私に支えられるわけなく、次第にずり落ちていく。私はそんな高取くんの身体をキュッと抱き寄せた。

「ね、大丈夫なの?目を開けて?お願いだから」

 男の人の身体にこんな風に抱きついたのはこれが初めてだった。
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