君をひたすら傷つけて
 私は高取くんの横に座ると自分のマフラーを外して、高取くんの肩の辺りに掛けてあげた。そして、近くの自販機からペットボトルの紅茶を買ってくると、それを少しでも温かいようにと高取くんに握らせた。時間にしたらそんなに経ってないかもしれないけど、徐々に苦しさが増してきている高取くんの傍で過ごす時間は永遠に続くのではないかと思うくらいに長く感じた。


「そんなに心配しないで大丈夫」

 苦しい表情をしているのに、私を安心させるかのように微笑みながら囁く言葉が胸に響く。どうしてこんな自分が苦しい時に優しいのだろう。もっと、自分のことだけを考えればいいのに…。


「だって、すごくキツそう」

「心配させてごめん。でも、大丈夫だよ」


 私が首を振ると高取くんはそっと私の身体を抱き寄せたのだった。そして、ゆっくりと背中を撫でる。

「ほら、怖くないでしょ。大丈夫」


 大丈夫。大丈夫と優しい手の動きに私は涙を零し、高取くんのコートの肩を濡らしてしまった。それに気付いているはずなのに、何も言わず高取くんは撫で続けたのだった。苦しそうな顔が私の涙腺を緩める。泣いてはいけないのに…泣いてしまう。


 高取くんのお兄さんが来たのはそれからすぐのことだった。
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