君をひたすら傷つけて
 雅人と再会したのは少し前で、その前は大学の時だった。同じサークルだから、会うことは多かったけど、美術系の雅人とはサークル以外の接点はない。いい人だと思うけど、たくさんの中の一人であって、特別に意識したことはなかった。でも、いい人なのは分かる。

「いい人よね。デザイン画は出来上がってみないと分からないけど、試着のドレスであれだけ似合ったから、本当のドレスも似合うと思う。デザイナーとしてはいいと思うわ」

「そうか」

 お兄ちゃんはそういうと、パソコンに手を乗せ、左手には携帯を持ち、その横にはスケジュール帳を開いている。きっと、今日のドレスの試着だけでなく、篠崎さんに関することの全てを書き込んでいるのだろう。

「私は篠崎さんのスタイリストとしてイタリアに行くなら、映画祭よね。イタリアはリズが事務所を開いているから、現地のスタッフもいるから、何かあっても十分に対応できると思う。スーツなども持って行かなくても現地で調達出来るわ。結婚式もするならそれ以外の荷物は身軽がいいわよね」

「それは助かる。でも、雅は里桜さんについていてくれると助かる。海と俺は先にイタリア入りして、その次の日に里桜さんとご両親がイタリアに入る。で、雅には里桜さんとご両親のことを頼みたい」

「里桜ちゃんとご両親??」

「本当なら海が案内したいって言っていたけど、それはスケジュール的に無理なんだ。だから、雅が案内してくれると本当に助かる。海が安心して映画祭の仕事をすることが出来るから」
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