君をひたすら傷つけて
 この映画は篠崎さんの今までの集大成だった。

 里桜ちゃんと出会い、傍に居たいのに、たった一日だけの時間しかなかったけど、篠崎さんは出来る限りのことをして、自分のマンションに里桜ちゃんを住まわせ、後ろ髪が引かれる思いで京都に向かった。向かった京都での撮影は監督の拘りで中々進まず、予定を大幅に超えての撮影だった。そんな中で必死に頑張ったから、今回の映画祭に出品され、篠崎さんも映画も受賞候補としてノミネートされている。

 東京に帰ってきてからも、篠崎さんの仕事は多忙を極め、里桜ちゃんとの時間は本当になかった。

 京都の撮影から戻ってきたら、やっとの思いで時間を作ったにもかかわらず、今度は篠崎さんと里桜ちゃんの焼肉デートをスクープされ、偽装結婚のはずが、本当に籍を入れる電撃結婚をすることになってしまった。映画祭に出品ということもあり、注目されるのは仕方ないが、芸能人御用達の店で二人が撮られるとは思わなかった。

 そして、あの静かな優しさに包まれた記者会見で里桜ちゃんの日々の生活を守りながらの生活が始まった。

 若手実力派俳優の篠崎海と普通の会社員の里桜ちゃんはフィレンツェで結婚式を挙げる。夢みたいな本当の話である。ドレスはオーダーで作り、たった一日だけど、二人だけの新婚旅行を楽しむことになっている。

「凄いスケジュールね。あまりにも余裕がなくて、疲れそう。特にミラノからフィレンツェまでの時間なんて、本当にギリギリね。映画祭で受賞したらレセプションもあるだろうし、かなり厳しい気がするけど」

< 821 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop