君をひたすら傷つけて
 ご両親の部屋の隣に私と里桜ちゃんが入ると、里桜ちゃんは部屋の中に入ると一気に花が開いたような可愛い笑顔を私に向けた。

 オフホワイトの壁に囲まれた空間はとても広く、壁にはイタリアの田園風景の絵画が飾ってある。家具は全てがマホガニーで、毎日磨いているとしか思えないほどの光沢をたたえていた。ソファにはオフホワイトのクッションが並んでいる。

 寝室とリビングの二部屋で、奥のドアを開けるとそこにはベッドルームが広がっていた。

「素敵ですね」

「本当ね。私も初めてだから、嬉しいわ」

 カーテンを開けるとそこに広がるのは日本とは違う石造りの街。写真を切り取ったように美しい風景を私は懐かしく思う。ヨーロッパ独特の空気がそこにはあった。たくさんの歴史と文化が融合する街に少しの懐かしさを覚えた。

「里桜ちゃん。結構歩くと思うから歩きやすい靴に履き替えてね」

「はい」

 荷物の片付けをしながら、私はフッと里桜ちゃんを見つめた。里桜ちゃんはワンピースにバレーシューズという動きやすいけど、とっても可愛いコーディネートだった。本当なら部屋でゆっくりするのもいいのかもしれないけど、時差ボケのことを考えるとゆったりと街を観光した方が気も紛れる。それが篠崎さんと里桜ちゃんが決めたことだった。

 荷物の整理を終わらせて、隣の部屋に行くと里桜ちゃんのご両親は既に準備を終わらせていた。今日の予定は観光の本に絶対に掲載されてある場所で、スペイン広場に、トレヴィの泉、コロッセオ、フォロロマーノだった。予定は決まっているけど、体調を考えながらの観光になる。
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