君をひたすら傷つけて
 アルベールを見送ることなかった朝を迎えた。私は自分の部屋の寝室の窓から遠く空を見つめていると、そこに飛行機などは見えないけど、青い空が広がっていた。そろそろアルベールはフランスに戻る飛行機に搭乗したことだろう。

 私は昨日のアルベールとのことを思いだしていた。あの告白を断った後も、その前と変わらず優しいままで私との時間を楽しんだ。断った時点で自分の部屋に戻ろうとした私を引き留めたのはアルベールだった。

『もう少しワインを飲もう。久しぶりに会ったから、さっきのことは半分忘れて、今の雅の生活のことを教えて』

『半分?』

『そう半分だけ忘れて。だって、俺が雅のことを本気で思っていることは誤魔化したくないから。だから、半分。久しぶりに会ったから、ワインぐらいゆっくり飲みたくて』

『分かっている』

 私がそういうとアルベールは安心したようは表情を浮かべた。そして、またグラスにワインを注いだ。

『そうだね。さ、ワインを飲もう。飲んだら部屋まで送るから』


 ワインを飲んで自分の部屋に戻ってきたのは日付が変わってからだった。あんなに飲んだにも関わらず、二日酔いもなく、ゆっくりとだけど、身体を起こすことが出来た。そして、私はこれからの自分のことを考えないといけないと思った。
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