君をひたすら傷つけて
 本当なら私が里桜ちゃんの撮影の手伝いをしないといけないけど、今の私には出来そうもなかった。本当にリズが居てくれてよかったと思う。泣きながらメイクをしたらきっと里桜ちゃんに気を使わせてしまう。結婚式に新婦に気を使わせてはいけない。でも、泣きすぎて赤くなった目を隠すことは出来なかった。

 教会の入り口で里桜ちゃんは友達と楽しそうに話していて、私が遅れたことで待たせすぎてなかったことにホッとした。お兄ちゃんを見上げると『大丈夫』だという風に頷いた。

「いい結婚式でしたね。とても感動しましたよ」

 教会の入り口のところには里桜ちゃんのご両親を始め、お友達や、橘さんも談笑していた。その穏やかな雰囲気を見て、泣いてしまって待たせたのではないかと思った心配が少しだけ安心に変わった。

 篠崎さんはお兄ちゃんに向かってそっと手を差し出すと、お兄ちゃんはゆっくりと握った。

「高取にも色々と世話になったな。感謝しているよ」

「気にしないでください。この後のパーティの準備も整ってます。ある程度の時間で皆さんを誘導しておきますので、海と里桜さんは写真の撮影が終わってから会場にお越しください」

 教会の中では篠崎さんと里桜ちゃんの写真を撮ろうと神崎くんが準備を始めているだろう。写真集をと依頼されているから、撮影はすぐには終わらないだろう。里桜ちゃんのことはリズが綺麗にしてくれるから、その心配をしないでよかった。

「ああ、分かった」

「里桜さんのご両親は皆より先に会場の控室に案内しておきます。少し休まれた方がいいと思ったので先に案内させて貰います」
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