君をひたすら傷つけて
「たまには泣くのもいいわよ。雅は内に色々と溜め過ぎ。でもね、泣いている雅をみて、私は少しだけ安心もしているの。自分の気持ちに素直になるって難しいでしょ。特に雅はすぐに我慢するから。高取さんがいるからかもね」

 リズは手早くクレンジングをして、くちゃくちゃになった化粧を落としていった。そして、化粧水、美容液、下地と手早くしてから、ファンデーションを押さえていく。泣きすぎてボロボロになったから、マスカラは控えてくれた。口紅も落ち着いた色を選んでくれた。

「お兄ちゃんは優しいから。でも、それってみんなに優しいし。篠崎さんとかは特別に優しいけど」

「雅にも特別に優しいわよ」

「それは妹だからよ」

「そうね」

「さ、こんなものでいいかな。早く会場に戻ってワインを飲みましょ。久しぶりに雅と飲めるわね。雅……。私は雅の味方だから」

 そういうと、リズは座っている私を後ろから抱き寄せた。その温もりに止まっていた涙がこぼれそうになった。初めて会った時から、私はずっとリズに守られている。そう思うと、私は幸せだと思った。

 リズと一緒にホールに戻ると、さっき座っていた席に辺りでお兄ちゃんがキョロキョロと辺りを見回していて、私の姿を視線の先に捉えるとスッとこっちに歩いてきた。

「大丈夫か?何かあったか?ワイングラスだけ残ったまま雅が居なくなったから心配した」

「リズに化粧を直して貰っただけよ」

「そうか。それならいい……。そろそろ海たちが到着すると思う」

< 879 / 1,105 >

この作品をシェア

pagetop