君をひたすら傷つけて
「でも、俺は義哉に感謝している。俺に雅を残してくれた。義哉を失って心のどこがが壊れるかと思ったけど、雅がいてくれたから、今の自分がいる。泣いている雅を大事にしたいと思った。泣けない俺の分も雅が泣いてくれた。自分の気持ちを吐露出来ない俺に代わって、雅が自分の気持ちを言ってくれた。感謝しているよ。

 まだ雅は若い。
 これから、たくさんの人と出会うだろう。今はそんな風に未来がないと思っていても、また誰かを好きになれるかもしれない。海と里桜さんの結婚式は本当に幸せに包まれて、素敵な式だったと思う。でも、今の時点で雅が未来を諦めることはない。雅も幸せになれる。幸せになって欲しい」

「もうあんな恋は出来ない。だって、今もこんなに好きなの。アルベールと恋をした。でも、好きは愛に育たなかった。本当に好きだったのに、素敵な人で未来を望んでくれたのに、私は一緒に歩けなかった。あんなに素敵なアルベールなのに、愛せないの」

 お兄ちゃんを困らせることは分かっている。でも、噴き出した気持ちは止まらなかった。

「義哉との子どもが欲しい。もう誰も愛せないなら、せめて子どもが欲しい。義哉の遺伝子が欲しい。お兄ちゃん……。酷いこと言っているって分かっている。だから、一度でいいから、私を抱いて。優しくしなくていい。ただ、私に義哉を頂戴」

「自分が何を言っているのか分かっているのか?酔って思考が定まらない時にそんなことを言うべきではないし、するべきでもない」

「分かっている。でも、これだけ酔ってないとこんなこと言えない。お兄ちゃん。私を抱いて。そして、私に義哉をください」
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