君をひたすら傷つけて
 日本までのフライトは順調で、空港で入国審査が終わると一応私の仕事は終わりだった。

「雅さん。色々とありがとうございました。おかげで楽しい時間が過ごせました」

「いえ、私も楽しかったです。ありがとうございました」

 里桜ちゃんのご両親は何回も頭を下げてから帰っていった。里桜ちゃんのご両親が在来線の方に歩いていく。そんな後姿を見ていると、後ろから叶くんの声がした。

「雅さん。色々とありがとうございました。楽しかったです」

「私も楽しかったです」
 
 橘さん親子と空港で別れると、私はマンションに帰ることにした。でも、なんとなくすぐに帰る気にならず、カフェに寄ってコーヒーを飲んでから帰ることにした。窓際に座り、流れる人を波を見ながら、私は携帯を取り出して、お兄ちゃんにメールした。

『先ほど、日本に到着しました。里桜ちゃんのご両親と橘さん親子とは先ほど別れました』

 多分、もう飛行機に乗って日本に戻っていると思う。このメールを見るのは日本に到着してからかもしれない。でも、連絡だけは、里桜ちゃんのご両親と一緒に日本に戻ることを頼まれたから、連絡までが最後だと思った。

 たったこれだけのメールでも一応、報告連絡にはなる。
 返事がないのが良かったと思った。

 昨日の自分の行動が……。それに対する反応が怖かった。自分の行動に責任は取らないといけない。自分で決めて、動いたことに後悔はしてなかった。
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