君をひたすら傷つけて
 そろそろお兄ちゃんから卒業する時が来たのかもしれない。フィレンツェでのことが無ければよかったとは思わない。あの時、酔っていたとはいえ、私はお兄ちゃんに抱かれたかった。篠崎さんと里桜ちゃんの幸せを目の当たりにして、私も幸せになりたいと思ったのもあったけど、私はお兄ちゃんに触れたかった。

 でも、夢から醒めると自分がしてしまったことがどういう意味があるのかを考えさせられた。そして、結果的にはお兄ちゃんを傷つけただけのことになってしまった。

 私は一人でいると色々と考えてしまうので、エマの事務所に行くことにした。オフだけど、一人でいるよりは仕事をしている方がいい。シャワーを浴びて、気持ちをスッキリさせてから、私はマンションの部屋を出た。

 イタリアで買ってきたお土産を持つと私もマンションの部屋を出た。一人でいるには今日はツラすぎた。

 エマの事務所に行くと、エマは居なくて、まりえだけがパソコンの前で仕事をしていた。事務所に入ってきた私を見ると、ふわっと笑う。いつもと同じ微笑みをみて、私は胸の奥にあった何か重いものがゆっくりと解れる気がした。

 ゆったりとしたワンピースを着たまりえは事務員という雰囲気はない。でも、手の軽やかな動きは流石で、紺のどこにでもあるような事務服を着た人よりも格段に仕事は早く正確だった。エマと私が動き回っている分、事務所の細々としたことはまりえがしてくれていた。



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