君をひたすら傷つけて
 里桜ちゃんがリビングに戻ってきて、二人でテレビを見て、それからしばらくして寝ることにした。何となく、里桜ちゃんが一人になるのは嫌そうに見えたので、私も和室にお布団を並べて寝ることになってしまった。

 和室には何もなく。客用の布団が二つあるだけ。でも、お兄ちゃんは使うことが無い時でも定期的に整理をする人だから、使ってない和室もすぐに使えるようになっていた。

「今回の新婚旅行、急に行き先が変更になったでしょ。不安にならなかった?」

「海斗さんが居たから大丈夫でした。それにパリに着いたら、リズさんも来てくれたし」

「コレクションはどうだった?」

「凄く素敵でした。モデルとして海斗さんが歩いているのを初めて見ました。それで、素敵なホテルに泊まって。夢のような時間でした」

「本当に篠崎さんは凄いわね」

「雅さん。普段は篠崎さんと言うのに、海斗さんの前では篠崎くんって言いますよね」

「それは篠崎さんは嫌うから。私と篠崎さんって同じ年なの。だから、篠崎さんとか言われるよりは篠崎くんと言われた方がいいって。だから、篠崎さんの前以外では『篠崎さん』と言うし、篠崎さんの前では『篠崎くん』と呼ぶの。

 私のことも藤堂ではなく、雅さんって呼ぶのはそのせいよ。俳優だからと特別扱いされるのは嫌だっていうけど、仕事で会う時は、呼び間違えそうになるわ」

「そうなんですね。ずっと、なんでだろうって思ってました」

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