君をひたすら傷つけて
「篠崎さんも賞を取ってきたから、それなりに風格のある服も必要になると思うの」

「雅さんって本当に仕事熱心ですよね」

 女性物の服や小物を見に来たはずなのに、いつしか、仕事で服や小物を探しているような気になってしまう。里桜ちゃんの服や小物も見るけど、つい、男性用の物も見てしまう。流行の最前線の物だけでなく、彼に似合うもの。イメージに合うものを探してしまう。

 職業病だから仕方ない。

「そうかな?でも、素敵な服を見つけると嬉しくなるでしょ。それと一緒。私は洋服が好きなの。自分の服を買う時も楽しいけど、篠崎さんの服を探すときは本当に面白いわ。難しいけど、彼ほど綺麗に服を着こなす人は居ないわ」

「海斗さんは姿勢が綺麗ですものね」

「そうね。姿勢も綺麗だけど、彼の持つ独特の雰囲気がブランドの魅力を引き出すの。ブランドとして、篠崎さんの『私服』として、服の提供もあるわ。でも、イメージが大事だから、難しい」

「じゃあ、高取さんの服も買いますか?」

 里桜ちゃんがそんなことを言うからドキッとしてしまった。

「買わないわよ。だって、私が買う必要ないでしょ」

「そうなんですね」

「そうよ。でも、たまには服をプレゼントするのもいいかもしれないわ。高取さんはいつもスーツが普段着化しているから、本当の意味での普段着が必要かもしれないわね」

 お兄ちゃんから服をプレゼントされたことはあるのに、私はお兄ちゃんに何もしてなかったことに気付いた。里桜ちゃん篠崎さんに似合う服を探している間に、私も何か似合うものをと思った。
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