君をひたすら傷つけて
「6年って言われた。ずっと思っていたって」

 仕事が忙しいのにわざわざフランスに会いに来てくれた時から思ってくれていたというけど、私は自分の事で精一杯でお兄ちゃんに気持ちに気付かなかった。

「ほら、言葉にしてくれているでしょ。愛しているから高取さんは雅を抱いたし、雅は高取さんのこと好きでしょ。一緒に生活して、一緒にいることが普通になっているでしょ。その普通を壊すのは怖いかもしれないけど、雅にとっても高取さんにとっても時期が来ていたと思うわ」

「時期?」

「そう。本当の兄妹にはなれないってこと。だって、高取さんは雅を愛している。でも、雅が受け入れられないなら、マンションを出て、別れるべきよ」

「自分の気持ちが分からなくなっていて。それに別れるも何も付き合ってないし」

「わかった。そこまで言うなら、しばらく雅はここに住んだらどう?少し、高取さんと離れてみて、自分のことを見直すのはいいと思う。ちょうど、来月から旦那が半年ほど、海外出張なの。だから、その間、私も一人じゃ寂しいし、雅が一緒に住んでくれたら助かる」

「ここに住むの?」

「そう。そうね、一か月か二か月くらい。ゆっくり休むのはどう?仕事は私と一緒に事務をして、エマには必死に働いてもらって、それでも、足りない時はリズに戻って貰えばいいでしょ。篠崎さんのスタイリストの仕事も『体調不良』ということを説明すれば大丈夫だと思う。エマは代表なのだから、こういう時に頑張って貰わないと。オフィシャルもプライベートも高取さんと離れてみたら、自分の気持ちがきっと分かると思う」

 お兄ちゃんのマンションを出ようとは思っていた。いきなり一人になるのは不安だけど、しばらくまりえのマンションに一緒に住んでから、新しく自分が済む場所を探すのもいいかもしれない。

「わかった。しばらく、ここにお世話になります」

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