君をひたすら傷つけて

離れること。考えること。

『今日はまりえのマンションに泊まります。心配かけてごめんなさい』

『ゆっくりして。よく寝るんだよ。おやすみなさい』

『おやすみなさい』

 そんなメールをすると、私はまりえのマンションの和室に布団を敷いて貰い、目を閉じた。すると、心の中を曝け出したからか、肩の力が抜け、ゆっくりと眠りの中に落ちていく。そして、目覚めた時には状況が一変していた。

 起きてリビングにはまりえがいて、時計を見て、驚いた。仕事に行く時間はとっくに過ぎていた。身体はよく寝たからか、楽にはなっている。

「おはよう。あの、今日、篠崎さんの撮影があったと思う」

「おはよう。撮影は心配しないでいいわ。エマが行ってる。それに、明日にはリズもこっちに来るから」

「なんでリズが?」

「雅のことが心配だからでしょ。エマがいて、リズが来てくれたら、何も心配することないわ。私のマンションに雅がしばらく住むことを言うと、エマもリズも賛成してくれたわ。後はあの二人に任せれば大丈夫」

 私がお兄ちゃんのマンションを出て、まりえのマンションに住むという提案はすぐにリズに連絡され、エマに連絡されていた。イタリアであった細かな事情は内緒にしてくれたけど、身体の調子が悪いということで、篠崎さんのスタイリストはしばらくはエマとリズが行い、私は静養するということになってしまった。

「荷物どうしよ」

「それも大丈夫。当座の物はリズが高取さんのマンションに取りに行く予定になったわ。着替えさえあれば、ここには何でもあるから大丈夫」

「私も行かないと。お世話になっていたのに、挨拶もしないでマンションを出るなんて」
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