君をひたすら傷つけて
 時間は過ぎ、私の身体も少し落ち着いてきていた。

 少しだけお腹は出てきたかなって思うくらいで、殆ど見た目には分からないけど、身体のキツさも少なくなり、色々な意味で安定してきたような気がする。自分が頑張って育てていくと決めたからか、気持ちも上向いていた。

 毎日、仕事を頑張っていると、ふとした瞬間に今でもお兄ちゃんに会いたいと思う。
 
 お兄ちゃんは今、何をしているかと考えたりする。

「篠崎さんのドラマの撮影と、共演女優の衣装合わせと、雑誌の撮影の準備が一緒の時間なの?さすがにそれは無理でしょ。どれか断るかしないと出来なかったから信用を失う」

 まりえは何度もタイムスケジュールを確認して、エマにどれかを断るように迫っていた。篠崎さんのドラマの撮影が延びたら、全部が総崩れになってしまう。共演女優の衣装合わせが別の雑誌の撮影でのハプニングで撮りなおしになったのが原因だった。

 断るのなら共演女優のスタイリングだけど、その雑誌のブランドが、エマのニューヨークでの仕事の中心だったブランドだった。日本でも仕事を初めた時にそのブランドの仕事を一手に引き受けていたから、断れない。

 最初の予定では、篠崎さんのドラマの撮影の担当はリズ。雑誌の撮影の担当がエマだった。でも、そこに共演女優の雑誌の撮影が入ったから、それが総崩れになってしまった。

 スタイリストの為に撮影を動かしてくれとは言えないのが現状だった。
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