桜ノ華
椿も5歳になった。
このまま二人で生きていくのなら、
ここ以上に適した場所はない。
そうは思っているけれど、
少しでも啓志を感じられる場所に行きたかった。
「この数年間、本当にお世話になりました。
感謝しても、しきれません」
深々と頭を下げる桜。
「…初めて会った日も、そんな顔をしてたねえ」
頭上から、おばあちゃんの声が聞こえた。
「きちんと自分の足で立って、自分で決めた女に言うことはない。
強く生きな、桜。だけどここはずっとあんたの家だよ」
「…おばあちゃん…!」
堪らず抱きついた。
「本当にっ…本当に、ありがとうございます…!」