桜ノ華
それは、クッキー。
「糖分、少しでも取っていただけたらと思って…
あのっ、でも、甘さは控え目です!
甘い物が苦手なのは重々承知してます、
お嫌いであれば捨ててくださって構いませんから…」
反応が怖くて、顔を上げられない。
しゅるりという音で、啓志がラッピングを解いているのだとわかる。
「…ありがたく頂こう」
声色で、嫌がっていないと伝わる。
一瞬安堵したけれど、大事なのは食べてからだ。
さくっ、といういい音と、咀嚼音。
「…うまい」