桜ノ華



それは、クッキー。


「糖分、少しでも取っていただけたらと思って…

あのっ、でも、甘さは控え目です!

甘い物が苦手なのは重々承知してます、

お嫌いであれば捨ててくださって構いませんから…」


反応が怖くて、顔を上げられない。

しゅるりという音で、啓志がラッピングを解いているのだとわかる。


「…ありがたく頂こう」


声色で、嫌がっていないと伝わる。

一瞬安堵したけれど、大事なのは食べてからだ。

さくっ、といういい音と、咀嚼音。


「…うまい」



< 30 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop