あなたと恋の始め方①
「最初から諦めていたのですか?」


 中垣先輩は自分の研究については妥協を許さない人なのに珍しい。でも、高見主任と折戸さんに掛かると仕方がない?でも、そんなに中垣先輩も甘い人じゃない。妥協してくれるような人なら私も苦労はしていないと思う。


 中垣先輩の研究に対する妥協の無さは自分だけでなく周りにもそれを求める。だから、その研究に対する執念とでもいうべき姿勢についていける人は皆無に近いので、私が大学の時からずっと一緒にいるようになった。私が、本社営業一課に行っている間に新しい研究員を一緒に仕事したらしいけど、新しい研究員は一週間で配置換えを申し出たらしい。


 そんな中垣先輩が妥協するなんて……。雨が降るかもしれない。


「そんなわけないだろ。でも、あの二人に抵抗できる人なんかいるか?俺みたいなそこらにいるような研究員が適う相手じゃない」


 確かに普通の研究員なら高見主任と折戸さんの話術の前では赤子も同然だけど、中垣先輩がそんなに言われるがままにするとは思えない。だから、絶対今日は雨になる。


「そんなことないと思います。中垣先輩ならきっと期日までに終わらせます」


「その言葉忘れるなよ。俺が終わらせるということは坂上も俺のペースで仕事をして貰わないといけないな」



「私も残業ですね」


「ああ、覚悟しろ。俺は自分が口にしたことは絶対に妥協しない。と言っても、今日は所長とスケジュールのことで話が終わってないから残業は明日からだから」

< 109 / 403 >

この作品をシェア

pagetop