あなたと恋の始め方①
『あの小林さんの彼女が私?』これが一番現実味がないことだった。本社営業一課で出会ってからの時間はかなり流れていて、その間に私はずっと小林さんに恋をしてきた。微かな好意が次第に膨らんでいく淡い恋心だった。でも、その思いが通じた。


 そして、これは記録更新が必須だと思っていた『彼氏いない歴=実年齢』にサヨナラを告げたということでもある。でも夢じゃない。現実の事で週末には小林さんと遊園地でデートすることになっていた。『遊園地でデート』の相手はあの小林さん。私が知る限りでも、静岡支社には小林さんを狙っている女子社員もたくさんいる。


 女子力の塊のような人が傍に居るのに、何で小林さんは私を思ってくれるのだろう。一緒に居ればきっと分かるかもしれないけど、小林さんの好みが『物好き』だとしか思えない。そんなことを考えていると、急に携帯のメール着信ランプが光る。光るランプと一緒に携帯は震えていた。


 そして、ぼーっと小林さんの事を考えていた私はそれに呼応するかのように身体もビクッとしてしまった。携帯を開くと小林さんからのメールだった。



『今日は本当にありがとう。嬉しかった。明日の朝の電話も楽しみにしてる。でも、無理はしないでいいからね。おやすみなさい。』


 シンプルな小林さんのメールに顔が綻ぶ。いつものメールとそんなに変わらないのに、違って感じるのは私の受け止め方が違うから。ふわっと気持ちがなって、好きだという気持ちが私の身体を埋め尽くす。


 電話して朝一番に小林さんの声を聴きたいのは私の方だと思う。


『明日の朝。電話しますね。おやすみなさい。』


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