あなたと恋の始め方①
「それは想像にお任せするよ。じゃあ、またね」


「はい。おやすみなさい」


 何度目かのおやすみを言ってから私が車を降りて、マンションのエントランスに入るのを確認してから、小林さんの車を動き出した。ガラス越しに手を振ると、小林さんは綺麗な顔で笑ってくれる。ガラス越しに見えなくなっていく車を見ながら寂しいと思うと同時に身体から力も抜ける。


 そして、自分の部屋に入るとベッドに身体を投げ出して目を閉じる。


 今日という一日は本当に気持ちがジェットコースターのように一気に駆け抜けたようにさえ感じた。研究所に取締役だけでなく、高見主任と折戸さんが来て、折戸さんと『デート』という前置きの上での食事。今まで体験したことのないような美味しいお寿司を味わい。二軒目のバーでは美味しいカクテル。そして、二度目のプロポーズ。それだけでもドキドキが最高潮になるのに、そこには小林さんが車で迎えに来てくれて。


 少しのドライブ。


 そして、私は少しだけ自分の気持ちに素直になった。ドキドキを通り越して…息が止まりそうになるほどの時間を一緒に過ごして、幸運にも、私は大好きな人の彼女になることが出来た。私にしては奇跡というしか言いようがない。




 考えるだけでも盛り沢山な一日にフッと息が漏れる。人生の中でもこんなに濃密な一日はないような気がする。


 なんて一日なんだろうと思ってしまった。

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