あなたと恋の始め方①
 そんなことをサラッという小林さんの言葉に私は顔が熱くなっていくのを感じていた。朝起きて、いっぱいドキドキして、大好きな小林さんの声を聴いてから会社に行くことの出来るということが私にとっても贅沢。


 小林さんも私と一緒。


 それだけで嬉しくて仕方ない。幸せだと感じるし、このままずっと話していたいと思う。小林さんよりもずっと私が贅沢だと思っているし嬉しくも思っている。


 でも、そんなのは恥ずかしくて言えなかった。心は大きな音を立てているのに、私は努めて平静を装う。


 小林さんにいきなり『あまりにドキドキしすぎて…息が止まります』なんて言えやしない。声を出すのにこんなに苦労したのは初めてだった。


 発音の仕方を少し頭で考えるくらいに緊張してしまう。頭の中で言葉がクルクル回って、可愛い言葉も気持ちに素直な言葉も出てはこなかった。


『お役に立ててよかったです。では、私も準備をしてから、会社に行くので失礼します』


 まるで業務連絡のような口調の自分を頭の中の私が客観視していて、あまりの残念さに溜め息が溢れてそうだった。


『私も声が聞けて幸せでした』

『声を聞いたら会いたくなりました』

『小林さん。大好き』

 これは全部言えなかった言葉。



『うん。ありがとう。今日も仕事頑張ってくる。美羽ちゃんの声を聞いて嬉しかったし、会いたくなった。でも、仕事なんだよな。仕方ない。美羽ちゃんも仕事頑張って』


『はい。小林さんもお仕事頑張ってくださいね』


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